2017年8月15日火曜日

川端康成 山の音を読んだ。

三島由紀夫が「芸術として完璧な作品 」と絶賛していたのがきっかけとなった。

この作品は、家の裏山の山の音に自分の死期を予感した老年の男性が 自分の息子の嫁 菊子に淡い恋心を描く、と言うのが主題。

まず驚かされたのは、構成なんですが、どこまで行っても物語の起伏が 限りなく平坦で、劇的なクライマックスなどはほとんど見られない。謂わば淡々と時間が静かに流れていると言って良い。
普段から作曲をする僕にとって、常に構成に関して神経をそそぐけれど、この様な平板な流れはとても恐ろしくて書けない。だってクライマックスが殆どないんだもの。

しかし一方では、錆びつこうとしている主人公、清らかな菊子、戦争により精神が腐りかけている長男を交互にグラデーションする事によって、日本人独特の情念や 悲しみが醸し出されている。
古い畳の匂いがする簡素な部屋に 白いいちりんの百合がいけてある。と言った印象を受ける。

反面、究極のエロチシズとも言えるのではなかろうか。 それを想像させるシーンは一度も現れないが、、、

また、老年の恋、と言う未だ未経験の感情に強い好奇心を持った。